日本とイギリスにはそれぞれ天皇、国王という“君主”がいる。
でも、国民との距離はかなり違って、エリザベス女王のように夫のフィリップ殿下と一緒に、一般国民の結婚式にサプライズ参加するということは日本では20000%ありえない。
天皇皇后両陛下にお越しいただたいら、それはそれで途方もなく困る。
東南アジアではタイにも国王がいて、むかしから皇室と交流がある。
国民との距離でいえば、イギリス<日本<<<タイという感じで、タイ国民にとって王室や国王は絶対的、至高の存在になっている。
だから安易に触れると、とんでもないケガをする。
日本経済新聞(2022年5月10日)
タイでアリババ系通販ラザダに不買運動 「王室を侮辱」
ネット通販大手のラザダがSNSに、伝統衣装を着た女性が車いすに乗る広告を公開した。するとすぐに後悔した。
王室支持者がこの動画を見て、これはチュラポン王女を連想させてタイ王室を侮辱していると激怒。
*王女は病気のために車いすを使っているらしい。
批判を受けたラザダは謝罪して、動画を削除するも時すでにおすし。
国民の間では不買運動が広がっているし、ナロンパン陸軍司令官はすべての陸軍関係者にラザダでの商品購入を禁止した。
陸軍副報道官が「不適切な行いをした組織に社会的措置を講じて王室を守る」と発言すれば、デジタル経済社会相はラザダに対して法的措置を検討するという。
タイには不敬罪があって、王室を侮辱したとして有罪になると、最長で15年の禁錮刑が科されるのだ。
皇室のある日本と王室のあるタイで、決定的な違いは「不敬罪の有無」にある。
天皇や皇室を言葉で侮辱しただけなら、日本では罪にはならない。
でも戦前には不敬罪があったから、ラザダのようなことがあればきっと逮捕者が出た。
日本では1946年(昭和21年)5月に、政府の食糧配給遅延に抗議する集会(食糧メーデー)が行われた際、参加者がこんなプラカードを掲げて大問題になる。
日本共産党員の松島松太郎が掲げたこのプラカードには、
「ヒロヒト 詔書 曰ク 國体はゴジされたぞ 朕はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね」
と表に書いてあり、裏にはこんな言葉があった。
「働いても 働いても 何故私達は飢えねばならぬか 天皇ヒロヒト答えて呉れ」
これで松島松太郎は不敬罪に問われ逮捕された。
でもこれは戦前の法律で、1945年8月に日本はアメリカに降伏していたから話は複雑になる。
結局、政府に代わって日本を統治していた連合国最高司令官総司令部(GHQ)が、「天皇といえども特別の保護を受けるべきではない」としたことから、松島には不敬罪ではなく、天皇個人に対する名誉毀損罪が適用された。
不敬罪で起訴された松島はフツウなら罪に問われるところ、途中で敗戦という天変地異のような出来事をはさんだため、アイマイになって最後は大赦を理由に免訴となる。
もう今後の日本で、「ナンジ人民 飢えて死ね」なんてプラカードが出ることはないだろうし、戦争に負けて、社会のすべてが一変することもないだろう。
いろんな意味で、日本ではこんな「プラカード事件」のような出来事は二度と起こり得ない。
万が一あったとしても、天皇個人に対する名誉毀損罪として軽い処罰を受けるだけで、これがタイなら不敬罪の重罪が適用されて刑務所行きとなる。
日本とタイには共通点がたくさんあるけど、やっぱり別の天地だ。
国王ラーマ5世が「神」と尊敬されている理由・「タイの三大大王」
日本とタイ(東南アジア)の仏教の違い① 飲酒・肉食・喜捨(タンブン)
1945年じゃないですか?
その通りです。ご指摘ありがとうございました。
不敬罪はまだあった方が良かった
不敬罪の復活はムリでしょうし、いまはモラルに期待するしかないですね。