韓国は親日と反日の2つの顔があって、それは政治に大きく左右されるから、その時々の両国関係によってどちらかの面が強く出てくる。
でも、一般の日本人が韓国をふつうに旅行するだけなら、反日感情とぶつかってイヤな思いをすることはまずない。むしろ丁寧に道を教えてくれるとか、親切な対応をされることが多いと思う。それで「韓国に反日なんてない!」と強調する日本人がたまにいる。
韓国旅行で「反日」を心配する必要はないけれど、韓国社会に反日は存在しないというのは間違いだ。そういうダークサイドは、一般の日本人旅行者には見えないところにある。
景福宮
韓国を何度か旅行して、「これは日本も参考にするべき!」と感心するのが、歴史的建築物や博物館で無料のガイドサービスがあること。
いまネットを見たら、日本人観光客がよく行く観光名所の景福宮には、英語、日本語、中国語、スペイン語、ベトナム語の6カ国語によるガイドサービスが1日に数回ある。
*詳しい内容はそれぞれ異なるので、詳細は各自で調べてください。
15年ほど前、景福宮で日本語ガイドの案内を利用したことがある。
ガイドは40代のおばちゃんで開始時刻の10分前には集合場所にいて、日本人の観光客と話をしながら、おすすめの観光スポットやニーズに合わせたグルメ情報を教えていた。声が大きくてよく笑うし、フレンドリーな態度で接していて、親戚のおばさんのような親しみやすさを感じさせる。
時間になると、「みなさん、本日は私のために、いえいえ、景福宮に集まってくれてありがとうございます。ここは1395年に初代朝鮮国王・李成桂によって建てられ〜」と説明が始まった。
彼女のガイドは、控えめに言ってもエクセレント。
日本語のレベルは高く、聞きにくい点はほとんどなかったし、それぞれの建物や飾りの意味を説明するだけでなく、「あなたは先ほど、『◯△□』というドラマが好きだと言っていましたね。あのドラマに出てくる◯◯王は〜」と景福宮とのつながりも話してくれた。あれはただの世間話ではなく、情報収集だったらしい。
ほかにも、日本人のツボをよくわかっていて、「ここからだと、屋根や建物の写真がきれいに撮れますよ〜」とか「私が写真を撮ってあげます。はい、キムチ~」と言ってくれて、日本人の客を喜ばせていた。
*「はい、キムチ」は写真を撮る際の定番のかけ声で、日本の「はい、チーズ」と同じ。
個人的に、韓国人はスピードを重視して、速さと引き換えに、大ざっぱな仕事をするという印象を持っていたけれど、このガイドは違った。客の質問には要領よく丁寧に答えて、1時間以上も手を抜かずに案内してくれた。これが無料というのは本当に素晴らしい。
日本人の観光客は大満足で、「すごく良かったです!」とガイドに感謝して景福宮から離れていった。
日本人の韓国旅行はこうしたものがほとんどだから、別の一面を経験することなく、楽しく旅行することができる。
日本語ガイドのツアーが終わった後、もうすぐ英語ガイドの説明が始まると知って、時間もあって予備知識もゲットしたばかりだから、英語の勉強を兼ねてこれにも参加することにした。
開始時間になると、ガイドは「みなさん、本日は私のために~」とジョークを飛ばすことなく、「ここ景福宮は1395年に初代朝鮮国王・李成桂によって建てられ~」と話し、「しかし、16世紀に日本軍が朝鮮を侵略し、この王宮の宝物を略奪した後、建物に火をつけて燃やしてしまいました」と言出したから、目が点になる。
しかも、景福宮を燃やしたのは日本人ではなく朝鮮の民衆だ。当時の朝鮮の記録には、王が逃げ出した後、「奸悪な奸民」が王宮に侵入して宝物を盗み、建物に火をつけたと書いてある。
ガイドは正しい歴史を知らないのか、それともウソをついているのかは分からないが、主語を取り換えて、ねつ造された歴史を話していた。
景福宮の日本語ガイドさん、王宮を焼いたのは日本人じゃないですよ
それだけでなく、壬辰倭乱(朝鮮出兵の韓国での呼び方)では、日本人は朝朝鮮人の耳や鼻を切り取るなど、とても残酷なことをしたと英語ガイドは話す。
「何ということだ…」とショックを受ける欧米人の中で、ボクだけが別の意味のショックを受けていた。さっきの日本語ガイドの説明では、豊臣秀吉や壬辰倭乱なんてワードは一度も出てこなかったのに…。
朝鮮出兵で日本軍が朝鮮兵の耳や鼻を切り取ったことは事実。しかし、その行為の意味は、当時の常識や倫理観で理解しないといけない。
ガイドの説明では、壬辰倭乱のせいで国土は荒れ果て、貴重なものが日本軍に根こそぎ略奪されたため、景福宮を立て直すことはできなかったという。
たしかに、朝鮮出兵の後270年の間、景福宮は再建されなかった。しかし、その原因には中国(清)の侵攻を受けたことや、朝鮮政府の政治がうまくいかなかったことなど、さまざまな要因がある。
景福とは中国の古典・詩経にある「君子萬年 介爾景福」からとった縁起の良い言葉で、北京の紫禁城の中にも「景福宮」という建物がある。
乙未事変(いつびじへん)
英語ガイドは日本による統治時代(1910年〜1945年)、朝鮮語は禁止されていたと説明したが、実際には、朝鮮総督府は第一次教育令を出して朝鮮語を必修科目にし、全国の学校でハングルを教えていた。(日本統治時代・朝鮮語)
英語ガイドによる景福宮ツアーの最後に出てきたのは、閔妃(びんひ、ミンビ)だ。閔妃は国王・高宗の妻(王妃)で、1895年に日本軍が景福宮に乱入し、閔妃を殺害した。それだけでなく、残虐な日本人は彼女の死体を犯し(死姦)、油をかけて燃やしてしまったと話す。
では、当時の歴史を確認してみよう。
19世紀末期、閔妃は高宗の父親である大院君と激しい権力争いをし、互いに刺客を放つなどして「暗殺合戦」を繰り広げていた。1882年には大院君らが兵士を扇動して壬午軍乱(じんごぐんらん)を起こし、閔妃を殺害しようとしたが、閔妃はかろうじて逃げ出すことに成功する。
しかし、その3年後の1895年、利害が一致した大院君と日本はタッグを組み、三浦梧楼らが計画して乙未事変(いつびじへん)を起こす。朝鮮人と日本人が景福宮に乱入し、閔妃を殺害したのは事実だが、その実行犯は誰か分かっていない。
閔妃の夫で景福宮にいた高宗は「私の部下の中に犯人がいた」と話し、息子である純宗は武官である禹範善(ウ・ボムソン)が母を殺害したと証言している。
正確なことは判明していないが、韓国では「日本人が閔妃を殺した」というのが歴史の定説で、社会の常識となっている。
日本人説の可能性は否定できない。しかし、「死姦」説は完全な間違いだ。
韓国人の作家・金辰明が『皇太子拉致事件』で日本人が閔妃の死体を犯したと記述したが、その後の調査でそんな根拠はなく、金による創作だったことが判明した。
韓国社会には間違いなく、親日と反日の2つが混在している。
でも、韓国の人たちが嫌っているのは日本の侵略、帝国主義で、目の前の日本人観光客は歓迎している。だから、もしあの日本のガイドが英語で説明することになったら、豊臣秀吉の侵略で始まって閔妃虐殺で終わるだろうし、英語ガイドが景福宮で日本人から写真を頼まれたら、「はい、キムチ〜」と笑顔で写真を撮ってくれる。
普通の日本人が普通に韓国を旅行したら、楽しい思い出ができるだけで、なかなかダークサイドには気づかない。
ある日本人女性が韓国に何度か行って好きになり、韓国語の勉強を始めた。韓国語が理解できるようになると、彼女はメディアの報道や街中の会話などで「反日」とぶつかり、実は韓国では厳しい日本批判がわりと日常的にあることに気がついた。「見える子ちゃん」になって心が折れて、逆に韓国が嫌いになってしまった。
そういう人もいるから、韓国と長く付き合っていくつもりなら、2つの顔があることを知って「反日耐性」をつけておくといい。
【韓国の対立】“盲目的な反日”を非難する人、それに怒る人たち
韓国人の基本的マインドは反日です。
学校で反日教育を受け、社会でも反日コンテンツに洗脳されるからです。
しかし個人的な出会いでは韓国人は日本人に親切でしょう。日本を旅行してみた人が多く、韓国の芸能人が日本で人気を得ている事実に親近感を感じるからです。
しかし、反日をしないと存立が危ぶまれている人たち、つまり北韓と親しい左翼の人たちが韓国にものすごく多いので、韓国で反日はなくなりません。
日本人が韓国を旅行すると、多くの人は韓国の好感度が上がります。
一般的には反日感情と出会いませんから。でも、韓国社会をよく知ると、あちらこちらにそれが見えてきます。
政治的に利用する人がいるかぎり、これはなくならないでしょうね。