浜松市と磐田市の境にある天竜川に沿って、車を走らせていたとき、日本語を学んでいたインド人からテンリュウガワの意味を聞かれ、面倒だったから「スカイドラゴンリバー」と適当に訳したら、「何だそれは!」と驚かれて、もっと面倒なことになった。
「天竜川」の由来には諸説あるけれど、この川は何度も洪水を起こし、「暴れ天竜」と呼ばれるほど流れが激しかったから、こんな名前になったと、じっちゃんから聞いたことがある。
人は空気と水が無ければ生きられない。「スカイドラゴン」は周辺住民に損害を与えたが、それがもたらすメリットも大きかった。人類にとって、水を確保することは生命線だから、イヤでも川と付き合うしかなかない。
最近、カシミール地方でテロ事件が起こり、インドとパキスタンの緊張が高まっている。インドはパキスタンに対し、インダス川の流れを止めるゾと脅しをかけた。これに対して、パキスタン人にとっては生死に関わる問題だ。
インドの脅し「インダス川を止めたろか!」に、パキスタン人の思いは?
古代エジプトは「ナイルの賜物(たまもの)」と呼ばれていた。
ナイル川は定期的に氾濫を起こし、人々に大きな被害をもたらしたが、同時に貴重な栄養分も運んでくれ、氾濫後の大地では肥料を使わずに小麦を収穫することができた。これがエジプトの繁栄を支えたから、ナイル川は神が与えたプレゼントと思われた。
ファラオ(王)にとって最も大事な仕事のひとつが「治水」で、いつ氾濫が起こるか予想したりして、ナイル川とエジプトの人々が上手に付き合うために、時間とエネルギーを使っていた。
時代や国を超えて、人間にとって川は無くてはならない存在なのだ。
「政治」や「治安」という言葉に使われている「治」という漢字は、川の流れと深く関係している。
「治」の左側にある「サンズイ」は水の流れを、右上の「ム」は農具の鋤(すき)を、そして「口」は神様に祈りをささげる器を表している。
つまり、「治」という字は、洪水などの災害を防ぎ、できるだけ大きな利益を得るという意味を持っている。古代中国では、川の流れをうまくコントロールすることが、世の中を治めることとつながっていたんだろう。
古代エジプトのファラオと同じく、治水とはそのまま政治だったのだ。
参照:読んでタメになる時事通信社のコラム「(212)「治」 洪水を治め、世を治める」

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