失言という”うっかりミス”に国籍や宗教に関係ない。だから、日本語の「口は災いのもと」と同じ意味のことわざは海外にもあって、英語では「The mouth is the source of all disaster」(あらゆる厄災は口から生まれる)や「Loose lips sink ships」(不注意な唇は船を沈める)という。
今回は、韓国と中国の“失言”を通して、彼らを怒らせるポイントを理解しよう。
先日、韓国ドラマのあるセリフが中国人を怒らせてしまった。韓国メディア・中央日報の報道(2025年9月22日)によると、国連大使出身の大統領候補を演じた主演俳優のチョン・ジヒョンさんがこう言った。
「中国はなぜ戦争を好むのでしょうか。核爆弾が国境地帯に落ちることもあり得るのに」
すると、それを聞いた中国人は「中国への侮辱」と感じ、ネット上でその場面が拡散され、怒りが広がっている。
中国のネットユーザーから非難を受けているだけでなく、中国でチョン・ジヒョンが広告している製品に対して不買運動まで起きている
「なぜ戦争を好むのか」韓国ドラマのセリフに中国が猛反発…広告まで取り下げ
ほかにも、中国を象徴する五つ星模様のカーペットが踏まれるシーンなどが燃料となり、炎上が鎮火する気配はない。この俳優がモデルを務める化粧品や時計などへの不買運動が広がり、広告を取り下げたブランドもあるという。
中国のネット上では、韓国文化の公開を制限する「限韓令」をつづけるべきだとの声も上がっている。韓国にとってこの措置はダメージが大きい。まさに「Loose lips sink ships」だ。
いっぽう、中国側は2017年に韓国人を怒らせる発言をした。
習近平国家主席がトランプ米大統領に対して、「韓国は歴史的に中国の一部だった」と言ったのだ。ある韓国人記者はそれを聞いて、信じられない思いがしたという。
しかし、そのころから中国の歴史認識にはには変化があらわれていた。ハンギョレの報道(2024年8月29日)によると、歴史教科書では中国と朝鮮半島の関係について、「統治する側(宗主国)とされる側(属国)」という上下関係を当てはめるようになったという。
政治、文化制度的に優れた「宗主権」を持っている帝国中国と、その文化をそのまま借用して服属した非自主的「属国」の朝鮮半島の王朝の関係だと規定したのだ。
習近平主席はなぜ「韓国は中国の一部だった」と言ったのだろうか
この言葉は韓国人の神経を逆撫でし、波紋が広がったが、相手は中国だ。それについて質問を受けた中国外務省の報道官は「韓国国民は心配する必要はない」と短く答えた。つまり、「騒ぐな」と一蹴したわけだ。
この「韓国は中国の一部だった」という発言は、朝鮮半島にあった国が中国を中心とする冊封体制に組み込まれていたということなら正確だ。歴史的に、高麗や朝鮮は中国の王朝を「主君」と認め、中国側は朝鮮を「属国」とみなしていた。
昔は、その関係を当然と考える朝鮮人も多かった。朝鮮王朝の末期(1895年ごろ)、朝鮮にいたロシア公使は本国への報告書で、韓国人が中国をこの世で最も偉大な国と称賛し、従属することを当然だと考えていたと記している。
ソース:「朝鮮外交の近代 (名古屋大学出版会) 森万佑子」
ただし、それは外交関係上のことで、朝鮮半島を統治していたのは国王を中心とする朝鮮政府だった。つまり、朝鮮は実質的には独立していたが、中国に対しては従属していたということになる。
これまで中国人から、以下のような話を何度か聞いた。
「中国は長い歴史の中で、モンゴルや日本など、外部の異民族に侵略されることは何度も経験したけれど、中国が他国を侵略したことは一度もない。中国人は平和を愛するから」
中国人に感想を聞けば、「イグザトリー」とこの意見に同意する人は多いと思われる。しかし、隋や元、清などから攻撃(侵略)された歴史のある韓国人としては信じられない思いがするだろう。
「中国はなぜ戦争を好むのでしょう」というセリフは、韓国の立場では自然でおかしい点はないが、確実に中国人の逆鱗に触れる。逆に、「韓国は中国の一部だった」という発言は中国的には当然でも、韓国人をイラ立たせる。
こうしたセリフは相手にとって侮辱となるため、必ず怒らせることになる。しかし、中国と韓国がそれぞれ自分たちの歴史認識を変えることはないだろうから、こうした地雷はきっとまた爆発する。

コメント
コメント一覧 (1件)
>中国が他国を侵略したことは一度もない。中国人は平和を愛するから
doubt
チベットウイグル