韓国語の文字ハングルは1443年に誕生し、先日9日には、それを祝う「ハングルの日」を迎えた。韓国の人たちはこの文字を愛し、誇りをもっている。
李在明(イ・ジェミョン)大統領はSNSに、「わが民族の知恵と歴史がつまった文化遺産そのもの」と絶賛し、「ハングルには民主主義と平等、国民主権精神が込められている」と感動的に書いた。
また、韓国のガールズグループ『BLACKPINK』のジェニーさんは以前から、「韓国に対する特別な愛情と誇り」を示していて、ハングルの日には「世界にハングルの美しさを伝える」と、オリジナルのハングルフォントを公開した。
日本人に足りないのは、こうした自国の民族文字に対する愛情だ。日本にはひらがなを記念する祝日はないし、首相が「民主主義と平等、国民主権精神が込められている」とひらがなを称賛することもない。世界にかなの美しさを伝えようとするアイドルなんて聞いたことがない。
日本人に足りないのは、こうした自国の民族文字に対する愛情だ。日本にはひらがなを記念する祝日はないし、首相が「民主主義と平等、国民主権精神が込められている」と称賛することもない。世界にかなの美しさを伝えるアイドルなんて、聞いたことがない。
韓民族の知恵と歴史が詰まった文化遺産・ハングルの特長は、「バカでもすぐにわかる」ということにある。

10年ほど前、ソウルにある朝鮮時代の王宮「景福宮」を訪れて、日本語ガイドの説明を聞きながら中をまわった。そのとき、景福宮の中にある修政殿に来たところでガイドがハングルを取り上げ、日本人観光客に向かってドヤ顔でこう言った。
「ハングルはとても合理的で科学的につくられているんです。だから、どんなにバカでも10日あれば覚えることができます。」
ガイドはハングルの優秀さ(分かりやすさ)を訴えたのだけど、日本人の感覚だとディスっているようにも聞こえてしまう。だから、10人ほどいた日本人観光客はこれを聞いて「え?」という顔をして、苦笑いを浮かべる人が何人かいた。

景福宮は北京の紫禁城の中にもある。
「景福」という言葉は中国語で「大きなしあわせ(≒大福)」を意味するから、ソウルの景福宮には「朝鮮王朝に大きな福がおとずれ、繁栄する」という願いが込められているのだろう。
500年以上前の韓国(朝鮮)では、支配階級である貴族の両班たちは漢字を使っていたが、民衆にとって漢字はあまりにも難しく、自分たちで使える文字は存在しなかった。
第4代朝鮮国王の世宗(セジョン)がそんな庶民を憐れみ、集賢殿(今の修政殿)に学者を集めて新しい文字をつくらせ、1443年にそれが公開された。
それが現在のハングル文字になる。
当時、ハングルは、「民に訓(おし)える正しい音」という意味で「訓民正音」と呼ばれていた。それを解説する書の中で、訓民正音(ハングル)はどんな文字なのかを表す有名な言葉がある。
「故智終朝而㑹,愚者可浹旬而學」
※「旬」には「10(日)」という意味があり、日本語でも1ヶ月を上旬、中旬、下旬に分けている。
賢い人なら朝が明けるまで(=半日)には習得でき、愚かな人でも10日あれば覚えることができる、といった意味になる。世宗王がこの一文を書いた。
あのガイドはこの言葉を元ネタにして、愚者をわかりやすく「バカ」に置き換えたのだろう。
訓民正音は民衆(愚者)のための文字だから、知識階級にはバカにされ続けてきた。現在の「ハングル(偉大な文字)」と呼ばれるようになったのは、日本統治時代の20世紀はじめだ。
ハングルは庶民のために開発された文字だから、日本語と韓国語を学んだ知人のアメリカ人は、ハングルはとても合理的で分かりやすいと褒めていた。
しかし、完璧ではない。
漢字を廃止してすべてをハングルで表すため、「はんぐるのひ」と書かれているのを見ただけでは、「ハングルの日」なのか「非」か「火」か「碑」か分からない。その前後を読んで正しい意味を判断する必要がある。
韓国人なら、それまでの知識と経験でたいていのことは分かるが、「ブウンを祈る」を「武運」ではなく、「無運(ブウン)を祈る」と誤解する人もいた。
ハングルは「愚者可浹旬而學」というほど優秀な文字だから、韓国社会ではこんなミスがたまに起こる。

コメント
コメント一覧 (4件)
“世宗(セジョン)がそんな庶民を憐れみ、集賢殿(今の修政殿)に学者を集めて新しい文字をつくらせ、…” —— 韓国人もこのように知っているのが事実上すべてですが、実際はそうではないという論文もあります。
明に対する忠誠心が強かった世宗だったので、漢字をより正確に読み発音するために訓民正音を作ったという論文(祥明(サンミョン)大学のチョン·ダハム教授)です。 世宗は訓民正音の創製後、民に広く知らせることは考えていませんでした。 代わりに、訓民正音の創製後から1年後、明の太祖が書いた「洪武正韻」を翻訳しました。
世宗は民を愛した王ではありませんでした。
世宗が朝鮮を奴婢の国にした主人公です。
>漢字をより正確に読み発音するために訓民正音を作ったという論文です。
この説は初耳です。でも、当時の考え方ならその可能性はありますね。
>世宗は訓民正音の創製後、民に広く知らせることは考えていませんでした。
世宗は訓民正音をつくったあと、庶民がそれを学ぶ学校を建てたという話は聞きません。庶民が訓民正音を使えるようになったのは、世宗の時代の数百年後です。しかし、今の韓国で世宗の批判をするのは勇気がいると思います。
韓国にはたくさんの幻想があります。
日本が朝鮮を収奪、略奪、植民地にしたという考えも幻想であり錯覚です。日本が朝鮮の娘たちを性奴隷として戦場に送り出したというのも幻想であり、朝鮮人を搾取し奴隷として抑圧したというのも幻想です。日本が彼らが朝鮮を統治しながらしたことは、朝鮮を近代化し、多くの学校を建てて朝鮮人を教育させ、彼らを朝鮮の518年の両班暴政から解放させて近代人にしました。もちろん朝鮮人ではなく日本人としての教育で、その過程で一部差別はありましたが、それは西欧の植民地政策とは根本的に違うものでした。
世宗に対しても幻想は存在しています。
現在、韓国人は世宗を”聖君”と称えていますが、実はそうではありません。
彼は、両親のうち一人だけでも奴婢になれば、その子は奴婢になる奴婢従母法を作りました。世宗時代以降、奴婢が急増したことがこれを証明しています。奴婢は人扱いされませんでした。一度奴婢なら一生を虐待される獣のように生きなければならず、彼らの子孫も奴婢でなければなりませんでした。 地獄でした。世宗が頭のいい人だったことは確かですが、彼は両班にとっては聖君でしたが、全民の聖君ではありませんでした。
>両親のうち一人だけでも奴婢になれば、その子は奴婢になる奴婢従母法を作りました。
これは初耳でした。世宗は現代韓国の価値観で英雄にされた人物で、悪い面も当然あったと思います。でも、それは今の韓国では消されていますね。