韓国の過ちの始まりは“汚染水”。科学より反日で動く社会

 

福島原発の処理水を海に放出する!

と日本政府が発表したあとの展開をみると何かおかしい。
その影響をモロに受ける日本は静かなのに、ほぼ関係ない隣国では大騒ぎになっているのは一体どういうことなのか。

中央日報日本語版の記事(2021.05.20)

韓国蔚山の漁業従事者ら、日本政府糾弾の海上デモ…「原発放射能汚染水放出はテロ」

蔚山(ウルサン)の漁業従事者が日本を糾弾するデモでこう主張した。

「日本汚染水放出は人類に対するテロだ」
「世界の人々が反対する汚染水放出を撤回せよ」
「原発汚染水が放出されればエコシステムが破壊されることは基本的な常識」
「汚染水はがんと白血病、DNA損傷などを引き起こして世界の生命を脅かすだろう」

そして韓国政府には国民の生命を守るために日本の水産物の輸入禁止を要求し、国民には日本産水産物の不買運動をおこなって「われわれの怒りを見せなければならない」と訴えた。らしい。

まずツッコむとしたらあれは処理水だ。
福島原発から出た放射性物質をふくむ汚染水を処理して、国際基準を満たした水に変えるのだから。
放射性物質を取り除く処理をおこなわないで、発生した汚染水をそのまま海に流すわけではない。にもかかわらず、「原発放射能汚染水」という大げさで不正確な表現を韓国の政府やメディアが平気で使っている。
一方で、韓国原子力学会は科学を無視して反日に走る社会を危惧していた。

ハンギョレ新聞の記事(2021-04-28)

韓国政府に放射能の危険を誇張しないよう主張した。原子力学会が汚染水を処理水と表現したのは、日本政府の主張をそのまま受け入れたことになるため、議論になるものとみられる。

韓国原子力学会、福島原発「汚染水」ではなく「処理水」と主張

 

日本政府の主張に関係なく、科学的見地からしたら処理水は処理水でしかない。
そういう当たり前の事実を指摘すると、「汚染水」という韓国政府の主張をそのまま受け入れた表現にしなかったということで、いろんな方面からたたかれる。
韓国の最後の砦はここだ。
原子力学会は国民感情に迎合することなく、科学に忠実であり続け、「日本汚染水放出は人類に対するテロだ」というバカげた主張のブレーキになってほしい。
しかしそれが、本当に本当に難しい社会であることはわかる。でもがんば。

 

「世界の人々が反対する汚染水放出」ということなんだが、リアル世界ではどうなのか?
国際原子力機関(IAEA)は技術的に問題はなく、「国際的な慣行に沿ったもの」と日本の対応を歓迎する意向を表明した。
世界各国の代表者から構成される、この世でもっとも信頼できる国際機関からOKをもらったのだから、「世界の人々が反対する」というのは仮想空間か脳内空間での話だろう。

でも、

「原発汚染水が放出されればエコシステムが破壊されることは基本的な常識」
「汚染水はがんと白血病、DNA損傷などを引き起こして世界の生命を脅かすだろう」

というのはその通り。が大事なことはその“量”だ。

放射線を浴びると細胞が傷ついたり死んだり、がん細胞になることがある。
ただ少量の放射線であれば、細胞の傷は修復されて人体に影響は出ることはないから怖がる必要はない。

梅雨に入っていまちょうど雨が降っている。
この雨水にも放射性物質がふくまれているから、雨水が皮膚に触れるとそれが付着して被ばくすることになる。でもそれは微量だから問題はない。
雨水による放射線被ばくに恐怖していたら、日常生活を過ごすことができなくなってしまう。
でもたとえば、一度に7000ミリシーベル以上の放射線を浴びるとまず間違いなく死ぬ。
上の2つの主張は、いわば雨水と7000ミリシーベル以上の放射線をごちゃませにした、非現実的でデタラメな論理でしかない。
大事なことは科学と事実を知って、正しく恐れること。

では、福島原発の処理水は具体的にどれほどキケンなのか?

 

それについて先ほどの記事で韓国原子力学会は、日本が処理をおこなわないで海に放出した場合でも、韓国国民が受ける放射線被ばく量は年間で3.5×10のマイナス9乗ミリシーベルトと予測している。
なんのことか分からんと思うが、これは「一般人に対する線量限度である1ミリシーベルト毎年の約3億分の1であり、無視できる水準」という。
とんでもない量の放射線量なら、「エコシステムが破壊される」「がんと白血病、DNA損傷などを引き起こして世界の生命を脅かす」というのはわかる。
でも実際には許容範囲の3億分の1でしかない。
こういう裏付けがあるから、韓国原子力学会は政府に放射能の危険を誇張しないよう求めたのだ。

「日本政府の主張をそのまま受け入れたことになる」という理由でこの見解が問題視されるのは、科学ではなくてただの反日。
でもいまこれが韓国社会を動かす原動力になっている。

文大統領は国際海洋裁判所への日本提訴を検討せよと指示を出したし、政治家もメディアも科学に背を向けて国民感情を刺激することばを連日連発した。

中央日報日本語版の記事(2021.04.14)

韓国首相「日本の汚染水放出は無責任な決定…もう一つの歴史的過ちを犯すこと」

ハンギョレ新聞の記事(2021-04-14)

韓国政府「日本の汚染水排出決定に強い遺憾…韓国国民の被害賠償を要求」

もひとつハンギョレ新聞の記事(2021-04-13)

「日本の福島原発放射能汚染水放流は“核テロ”…撤回せよ」

 

国民感情で自国の原子力学会の主張を否定し、「汚染水」と表現することがそもそもの間違いの始まり。いま韓国社会で出ている意見はすべてこれが前提になっている。
これから韓国社会どう動くかしらんけど、正しい知識のある人たちの声が届く可能性は低そう。
日本社会が冷静なのは科学でデマを打ち消す人が多いからだ。

 

 

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2 件のコメント

  • ガリレオの宗教裁判ですね
    「それでも処理水は問題ない」と言って去る科学者。んーうまくないな

    >「世界の人々が反対する」というのは仮想空間か脳内空間
    中国もだからじゅうぶん現実。人口5分の1ですよw

  • > >「世界の人々が反対する」というのは仮想空間か脳内空間
    > 中国もだからじゅうぶん現実。人口5分の1ですよw

    どわはははは、なかなかお上手。
    まあ確かに日本の人口は中国の5分の1ですけどね。
    だからと言って「世界の人々が反対する」っていうのはねぇ・・・。いくら(中国+韓国)が反対したところで、脳内空間であることに変わりありません。
    それに中国人は、韓国人ほど真面目に反対しているわけじゃないですよ。単なる外交政策の一貫です。

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    今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。 また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。