「正しい歴史」が友好を遠ざける? 日韓交流に潜むプロパガンダの懸念

今回も、前途多難だけど、避けて通ることはできない日本と韓国の関係について書いていこう。動機は「善」だったとしても、相手の立場や感情に配慮しないで、一方的に「正しさ」を強調しても、真の友好にはつながらない。

目次

「地獄への道は善意で舗装されている」

ヨーロッパには「地獄への道は善意で舗装されている」ということばがある。
表面的には「良いこと」「正しいこと」に見えても、実は悪事が隠されていて悪い結果をまねく場合がある、といった意味だ。

新年早々、共同通信が掲載した記事を読んで、うっすらそんな気配を感じた。(2026/1/4)

豊臣秀吉は侵略者?日韓の高校生が歴史認識のギャップに直面 「うらみはしない」戦争中に多数死亡の事故現場で共に花たむける

この記事では、韓国の高校生が山口県の高校を訪れ、日韓の生徒が交流した様子が紹介されている。その中で、日本の生徒は「今まで知らなかった歴史」に気づかされたという。

ここまで読んで、少し嫌な予感を覚えた人もいるだろう。
昔から「日韓友好」を強く訴える人は多い。しかし現実は、なかなかうまく進まない。
その理由の一つが「正しい歴史」という考え方にある。その内容が一方的だと、理解よりも反発を生んでしまう。

 

先ほどのことわざの元ネタは、フランスの神学者ベルナルドゥスのことばとされる。
12世紀、十字軍への参加を訴えた彼は「地獄は善意や欲望で満ちている」と言った。ちなみに、十字軍の遠征は惨敗に終わり、ベルナルドゥスは深く失望した。

「正しい歴史」をめぐる温度差

日本と韓国は、どちらも「仲良くしたい」という気持ちは持っている。それでも、歴史の問題になると衝突することが多い。むしろ、しないほうが少ない。

日本側は安全第一で、「見えてる地雷を踏まない(余計な問題には触れない)」と考え、歴史認識の話題を避けがちだ。
一方、韓国側は「真の友好のためには、日本人が正しい歴史を学ぶべきだ」と強く考えている。
この思いは、日本にとってはとても重く感じられる。

韓国が言う「正しい歴史」は、日本人から見ると「反日的」「自虐的」だと受け取られることが多い。だから、それを強調されると、心の距離は縮まるどころか、広がってしまう。

李明博氏の戦略と「教育という名のプロパガンダ」

李明博氏が計画した「歴史教育」

大阪府出身で月山 明博(つきやま あきひろ)と呼ばれていた少年は、後に第17代韓国大統領となった。
その李明博(イ・ミョンバク)氏がソウル市長をしていたころ、日本の修学旅行生を対象にしたある計画を考えた。

彼はソウルにユースホステルを建て、日本の生徒をそこへ泊まらせ、独島(竹島)が韓国の領土であることを教えようとした。さらに、西大門刑務所歴史館、安重根の記念館などを見学させ、日本がどれだけ残酷な行為をしたかを学ばせようとした。

くわしい内容は、韓国経済が報道に出ている(2005年8月3日)。

일본 왜곡교과서 채택 저지 성금 전달

韓国の歴史認識

韓国の歴史認識では、自国は被害者、日本は加害者という立場が基本だ。
李明博氏の計画は「真実を伝える親切心」だったのかもしれないし、韓国の価値観では「善行」になる。
しかし日本側から見ると、多感な時期の子どもたちに対する「政治的な刷り込み」に映る。
教育という名のプロパガンダ(特定の主義・思想にもとづく政治的な宣伝)として、抵抗を感じる人も多いはずだ。

歴史には多面的な見方があるから、「正しい歴史は一つしかない」という考え方をしていると、衝突は避けられない。
韓国の感覚としては「真の友好のために必要なこと」でも、それを強要するとハッピーエンドと逆の結果になる。

日本の修学旅行が示すこと

進む韓国離れと台湾人気

日本の学校で、海外修学旅行先として人気なのは「台湾」だ。
全国修学旅行研究協会によると、台湾を訪れた生徒の数は、2006年度から10年で約12倍に激増した。
一方、かつて人気だった韓国は、2014年ごろから選ばれなくなった。

修学旅行先は台湾が人気No.1 韓国・中国が激減した理由

中央日報の報道によると、韓国を訪れる日本の生徒は以前は3万人近くもいたのに、2017年以降にはわずか1000人台に激減した(2025.07.13)。

<韓日60年の記憶④>4万人記録した韓国修学旅行…ソウルから日本の中高生が消えた理由(2)

これはもう絶滅危惧種に指定していいレベルだ。
ただし、以上はコロナ禍がはじまる前のことで、現在の状況は分からない。

台湾と韓国の違い

2010年代の台湾と韓国を比較した場合、どちらも治安は良く、公共交通機関も便利で物価も大きく変わらない。それでも台湾が選ばれる理由として、毎日新聞の記事は台湾が「親日的」であることを指摘している。

韓国への修学旅行が減った理由を AIに聞くと、「歴史認識の違いに起因する国民感情の悪化やデモへの不安」と答えた。
思い返すと、確かにピンとくる出来事があった。
2012年に李明博大統領が竹島に上陸し、さらに慰安婦問題の「解決」として天皇に謝罪を要求して、日本中を激怒させた。
しかし、韓国側にとっては常識的なことだったから、日本の怒りに反発し、日韓関係は一気に悪化した。
北朝鮮の核実験やセウォル号事故(2014年)などの悪要因もあったが、教育を目的にした旅行という性質を考えると、やはり歴史認識の問題が大きい。

日韓高校生交流の問題点

日本で疑問視された韓国への修学旅行

2000年代に、ある日本の学校は修学旅行で韓国へ行き、生徒たちに、西大門刑務所歴史館、安重根義士記念館、ナヌムの家(日本軍「慰安婦」歴史館)を見学させた。
修学旅行は大切な青春の思い出になるはず。
それなのに、生徒たちが韓国の博物館で凄惨な拷問シーンの模型を見せられたりして、自国を恥じ、罪悪感をもつようになる。1990年代に、ある高校がソウルにある独立運動記念公園を訪れ、生徒に謝罪文を読ませたこともあった。

そのため、当時、産経新聞など保守系のメディアを中心に「生徒に一方的な加害者意識を植え付ける自虐教育だ」といった激しい批判が巻きあがった。
全体的にみれば、韓国の修学旅行で生徒にこんな体験をさせたのは一部だと思うが、イメージの失墜はまぬがれなかった。
修学旅行先で韓国をはずす保護者や学校が現れたのも仕方ない。

韓国には歓迎された修学旅行

一方、韓国では「正しい歴史を学んだ日本の若者」として好意的に受けとられた。韓国社会では、韓国の歴史認識に同調する日本人は「良心的」として称賛される。
日本にもそう考える人が一定数いたから、上記の内容の修学旅行が実行されていた。
そうした人たちは「歴史を知ればもっと仲良くなれる」と信じていたかもしれないが、結果的にはその機会を無くし、日韓友好を遠ざけた。

日韓高校生交流の問題点

一方的な歴史理解の危うさ

山口県で行われた日韓高校生交流でも、歴史の伝え方は一方的だった。

・豊臣秀吉は朝鮮半島を侵略したため、韓国では「悪い人」とされている。
・伊藤博文は「侵略の主導者」というネガティブなイメージが強い。
・吉田松陰が育てた伊藤博文などが、韓国を植民地にすると政治的に決定した。

日本史で英雄とされる人や、山口では郷土の偉人とされている人物が、韓国では否定されて「悪者」になっている。
日本の生徒は「聞いたことがなかった」と驚き、韓国の生徒は「日本は歴史をくわしく教えていない」と不満を述べた。
これが、彼らが直面した「歴史認識のギャップ」だ。

韓国側は「未来の世代が対立を克服するため、相互理解を高める」、「交流を進めながらお互いを知っていってほしい」と語るが、内容は韓国の被害性や日本の加害性を強調するものだった。

韓国の知らない歴史

たとえば、元寇では立場が逆転したが、それはきれいにスルーされた。

歴史認識の違い 朝鮮出兵では日本、元寇では韓国が加害者だった

伊藤博文についても、もともと彼は日本の朝鮮統治に反対していたのだ。
彼が初代韓国統監として韓国に移動すると、現地の日本人に対し、韓国の人たちを決して侮辱したり、だましたりしてはいけないと伝えた。
「彼らを侮辱するようなことがあれば、直ちに我が国威を喪失し、我が国家の蒙る不利益は言葉に出来ないほどでしょう」と訴えた。

「決して韓国を侮辱するな」 伊藤博文が日本人に訴えたこと

しかし、韓国では、伊藤博文が韓国人の感情に配慮したことは伝えられていない。

韓国で伊藤博文は「侵略の主導者」や「侵略の元凶」と言われているが、そもそも日本は韓国を侵略したとは考えていない。韓国併合は当時の欧米列強が認めたもので、国際法にも違反していない。
「韓国を植民地にすると政治的に決定した」という韓国側の歴史認識を一方的に伝えるのも問題だ。
記事を読むかぎり、「日韓高校生交流」では日本側の視点や、韓国にとって「都合の悪い歴史」は出てこなかった。

長生炭鉱水没事故

また、今回の交流で日韓の生徒たちは、1942年に事故が発生し、多数の朝鮮人と日本人が死亡した「長生炭鉱」の跡地を訪れている。
戦時中の朝鮮人労働者については、韓国側は「強制連行」だったと主張するが、日本はそれを否定し、平行線がつづいている。
2018年には韓国の最高裁が日本企業に有罪判決を言い渡し、日本は「日韓合意と国際法に違反している」と反発して、日韓関係は戦後最悪といわれるほど悪化した。
そんな事情もあり、日本は「長生炭鉱水没事故」が新しい日韓の政治問題になることを警戒している。

その現場を訪れが日本の高校生は、「韓国の人の犠牲が伝わらなかったら、歴史として間違ったことを伝えることになる」と話したり、歴史をうやむやにしてはいけないと日本政府を非難した。
一方、韓国の高校生は多くの日本人も亡くなったことを知って驚き、「日本と韓国の学生が真実を学び、伝えるのが大事だ」と語っている。

日本の生徒は特定の意図に誘導されているように見える。

「日韓交流」に反発する日本人

「仲良く交流しよう」と強調しているけれど、全体的には日本の生徒たちに「日本は韓国に悪いことをした」という認識をあたえている。
表現や内容に問題のあるコメントは削除される『ヤフコメ』を見ても、ほとんどの人がこのイベントの目的には賛成できても、方法には疑問や不安を感じていた。

・子供たちを自虐史観、いや韓国的な歴史認識へ誘導するための教育ならば、断固反対です。
・隣国なんてお互いに侵略しあうのが当たり前だし、遠い昔のことをいつまでも恨み続けるのは異常だよ。
・伊藤博文は親韓派で庶民の識字率を上げるために倉庫でホコリを被っていたハングルを用いた教育を施した。
・未来の世代には責任もない。いつまでも贖罪意識を植え付けるような教育には感心しない。

日本人の通常の感覚からすると、日韓交流をした結果、日本の高校生が自国の政府を批判することには違和感を感じるのでは?

ちなみに、最近では韓国側の視点を取り入れる動きが進んでいるらしい。
豊臣秀吉についての児童向けのマンガ歴史本を見たら、最後は侵略に走り、バッドエンド風になっていて驚いたという人もいた。

 

現在の韓国で伊藤博文は「侵略の元凶」として嫌われている。
しかし
、彼は韓国文化を尊重し、民族衣装の韓服を着て記念写真を撮ったこともある(後方の真ん中にいる人物)。
これも韓国人の知らない事実だ。

本当の友好とは?

「正しい歴史」の刷り込み

今の韓国には、日本の修学旅行生を特定のホテルに泊まらせて、独島が韓国領であることを教えたり、西大門刑務所歴史館などを見学させ、日本の残酷行為について学ばせる計画はない(と思いたい)。

しかし、「相互理解」の名のもとに、自分たちが主張する「正しい歴史」を日本の子どもたちに教えようとしている動きはある。
韓国政府は以前から、予算を出して若い世代の日韓交流事業をおこなっていて、今回のイベントもそのひとつとしてある。だから、「韓国ベース」で進むのは仕方ないが、日本の中には「政治的な戦略」を感じる人もいるだろう。
上記の記事を読んで、「プロパガンダのにおい」を感じる日本人は多いだろう。

道徳的優位に立とうとする韓国

韓国には、日本に正しい知識(歴史認識)を示し、間違った歴史認識を変えたいという思いがある。簡単にいえば、被害国という立場から、道徳的優位に立ちたいと願っている。

たとえば、中央日報のコラムには、日本についてこう説明されている(2015.08.14)。

社会の誤った方向を正す集団的知性や市民社会活動も微弱だ。メディアの政府牽制や誤った社会現象に対する批判もそんなに強くない。こうなれば国家社会の自浄機能が弱まる。

日本の精神的・道徳的優位に立って堂々と

 

日本は間違いを正す力が弱く、国家の自浄機能も弱い。だから、韓国がそれをする必要があるらしい。
コラムの結論としては、「(韓国が)名分と道徳的優位に立って堂々」と日本に対応することが重要だと述べている。

韓国側は、自分たちが主張する歴史認識を日本人が受け入れることが「真の和解」になると考えている。しかし、それは日本を「永遠の加害者」として固定することを目的としているように見えるから、日本は受け入れられない。

友好の一歩は違いを認め合うことから

本当の友好は、相手の歴史観を正すことからではなく、お互いに違う見方があることを認め合うことからしか始まらない。
韓国側が日本の認識が間違っているという前提で、子どもたちに「自国の正しさ」を伝えようとしたら、間違いなく日本の大人が反発する。

共同通信の記事は「将来もっと良い日韓関係を築いてくれたら」というキレイなことばで終わっている。
しかし、日韓が「加害国と被害国」という関係性から抜け出し、韓国側が道徳的優位に立つという発想を捨てて、対等の立場で話し合うことができなれば、それは難しい。
善意でしたことでも、不幸な結果に終わることがある。
日本の修学旅行がそのことをはっきり示している。

 

 

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この記事を書いた人

今まで、東南アジア・中東・西アフリカなど約30の国と地域に旅をしてきました。それと歴史を教えていた経験をいかして、読者のみなさんに役立つ情報をお届けしたいと思っています。
また外国人の友人が多いので、彼らの視点から見た日本も紹介します。

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